学園祭って、どうしてこうも熱気があるんだろう。 その後、清司のクラスの喫茶店は大盛況。行列が並び客は30分待ち。
たかだか素人の集団が人まねで喫茶店だのライブハウスだのやってるだけだっていうのに。あー、あつい……。
おまけに、なんでうちのクラスは、こんなに客の入りが悪いんだ?
愚痴だらけで、急ごしらえの厨房に立つ清司のクラスは、喫茶店を営んでいる。
「きーよーしっ」
ひょこっと顔をだしたのは、いとこの沙希である。
「ぜぇんっぜん、人、入ってないねえ」
「まったくもって余計な世話だ」
「ウエイターの態度の悪さも原因かしら?」
と言いつつ、沙希はフェンディのトートバッグから、紙袋を取り出した。
「何、それ?」
「紅茶の秘境ガムガムダ地方から直輸入した最強の紅茶よっ」
……そんな地名聞いた事もないっての。沙希は誇らしげに紙袋をかざしてはいるが。
「人を集めると言われる、不思議な紅茶なのよ〜」
沙希は勝手にその紅茶を淹れ始める。
と、ティーポットから、ふわり、ふわりとなんとも言えない甘い香りが漂ってきた。
どーせ、バニラエッセンスかなんかが、入ってるんだろ。あ、でも、良い香り……。
揃いもそろって紅茶をオーダーし、一様にため息をつく。
なんて、甘く、良い香りなんだろうと。
「わー、思っていたよりすごい威力。ね?私がコレ持ってきて、助かったでしょ?」
確かに、その通り。その分には素直に礼を言うが、しかし、腑に落ちないではないか。
清司はそっと、ティーポットの蓋を開けてみた。
「………」
そして、すぐに蓋を閉めた。今のは、見なかったことにした方がいいよなあ。
ティーポットの中には、小さな小さな老人が、仙人みたいに長い白髪と髭の老人が、風呂にでも浸かるかのように、紅茶に浸かり、こちらを見ていたのだった。
END